
質問
金融機関から融資を受けている関係で決算書を提出しております。
今回は赤字になりそうです。
追加の融資も検討しているため、金融機関に対しては
良い決算書を提出したいとこです。
最近、たまたま知り合いの経営者から「減価償却費は任意償却だからゼロでもいい!」と聞きました。これが本当なら減価償却費をゼロで計上しようか悩んでおりますが
どうでしょうか?
回答
法人税法上、減価償却費をゼロで計上するのは誤りではありません。
但し、基本的にはきちんと計上された方がいいかと思います。
決算書と融資
金融機関から融資を受けると決算書の提出を求められることが多いです。
金融機関の立場では、毎月の返済をしてもらえればいいわけですが、
決算書を入手する事で今後の返済リスクを把握したり、
決算書の状況がよければ追加の融資等の提案資料として役立てます。
会社にとって決算書は金融機関との関係を考えた場合、赤字より黒字の方がいいことになります。
赤字であれば赤字幅が少ない方がいいですし、黒字であれば黒字幅が多い方がいいことになります。
理屈上は、売上を増やしたり費用減らせば可能ですが、通常、売上であれば入金、経費であれば出金がともなうためそんな都合のいいことはできません。
ここで皆さん、減価償却費はご存じでしょうか?
少し専門的な内容になりますが、固定資産といった金額の大きな支払があった場合、支払い時に全額を経費にするのではなく、耐用年数に基づいて数年から数十年にわたって経費にします。ここでポイントなのが減価償却費は支払を伴わないため、決算書の調整に使いやすい勘定科目になります。
減価償却費のゼロ計上について
例えば減価償却費が1,000万円あった場合、減価償却費をゼロ計上すると
利益を1,000万円増やしたり、赤字の決算書を黒字の決算書に変える事が出来るかもしれません。
ここで感が鋭い方は、そんな調整が出来るのか?と思われるかもしれませんが
実は法人税法では減価償却費を任意計上としております。
なお、所得税法上では減価償却費は強制計上になっております。
同じ税法なのに法人と個人で扱いが異なるため分かりにくいですね。。
法人税法第31条
内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として第22条第3項(各事業年度の所得の金額の計算の通則)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかった場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする。
所得税法第49条
居住者のその年12月31日において有する減価償却資産につきその償却費として第37条(必要経費)の規定によりその者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその者が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額とする。
金融機関の決算書のチェック
金融機関は入手した決算書について、単純に最終の利益や損失のみを見ているわけではありません。当然、中身についてもチェックしております。
減価償却費が利益調整になりやすい科目であることも知っているので融資の検討にあたっては重点的にチェックされます。減価償却費が多い業種によっては、金融機関から決算書といっしょに減価償却費の計算書についても提出をもとめられる場合もあります。
金融機関が提出された決算書について計上されるべき減価償却費が計上されていなかった場合、税法上で認められていた処理だとしても、良い印象をもたない可能性が多く、融資の際でもマイナスになる可能性が低くはありません。
金融機関に対して、悪い決算書を提出するのは抵抗感あるかと思いますが
適切に減価償却費を計上した上で、金融機関と長期的な信頼関係に基づいた関係を構築していくのがよいかと思います。
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